
Photo: Hana’s Garden “チュチュオプティマ”
日々、仕事を終えて帰宅の途に就く時考えることは、寝るまでにやらなければならない家事のタイムスケジュール。
子どもが寝る時間帯に帰宅できる場合は、先ず、なかなか寝付かない子どもの寝かし付け。それを終えてから夕食、お風呂を短時間で済ませ、洗濯をして、アイロンがけをして、翌日のお弁当の具材作りに入る。寝る前には30分でもいいから、音楽を聴いたり本を読んだりする時間を作るのが目標だ。
遅く帰った時は、一連の家事を済ませて何とか睡眠時間を確保する。翌日は早朝から、自分の身支度よりも先ず、家族の水筒準備やお弁当詰め、洗濯物の回収、分別したゴミを回収スケジュール通り忘れずに出す時間を確保しなければならないからだ。
土日は、子どもの塾や習い事の準備や付き添い、さまざまな行事も詰まっている。家族の1日3食の食事の準備もしなければならないし、1週間分の家の掃除もしなければならない。また、子どもが病気になったり、PTA行事だったり、新型コロナウィルス感染対策で学校が休校になった場合は、妻と相談の上どちらかが休暇を取って対応する。共働きの子育て世代だから、忙しいのも当然だと思う。
しかし、家事・育児は誰もが必要とする暮らしの営みのはずなのに、それが社会から正当に評価されず、生きづらさを感じてきたことも事実だ。子どもの看病に伴い休暇を取ろうとすると、奥さんではなくなぜ男性のあなたがという反応がしばしばであり休暇は取りづらい。アイロンがけや弁当作りについても「なぜ奥さんではなくあなたが」と不思議がられるし、親の世代からは、家事は「奥さん」がやるべきものといった考えが伝わってくる。
2年目は研究メンバーが都内の共学大学でアンケートを実施したが、今の大学生の「性別役割分業的職業観」が昭和時代にタイムスリップしたかと錯覚するほど旧態依然とした感覚に驚いた。やはり家庭の影響が大きい。親世代が「性別役割分業的職業観」に縛られていて、それを再生産していく実態が明らかになったと思う。
1年目は、“「多様性」とは、お互いの違いを認め合い、皆がそれぞれに「自分らしく」生きられることであり、男女共同参画の基本も多様性にあるのだ”ということをイベントを通じて確かめ合ったが、日本社会は、どうしても人と人との関係が固まりやすく同調圧力も強くなりがちだ。そこに、「男は仕事、女は家庭」といった規範が根強く残り、人々の選択肢を著しく狭めている。これが女性だけでなく男性も生きづらさを感じる根本的原因ではないだろうか。日本の2019年の出生数が年間90万人割れとなり人口減少が一段と鮮明になっていること、ジェンダー・ギャップ指数が121位と過去最低で主要7カ国(G7)で最下位となっていること、すべて連環していると思う。
この3年間、研究メンバーと繰り返し対話することによって理解を深め、問題を探ってくことができたことに感謝している。おかげで、妻との間に生じていたジェンダー問題について、客観的に見つめ直し、評価・検討することができた。さらに、この研究をきっかけに草の根運動をしている団体にめぐり合い、実際に行動して社会変化を起こそうと頑張っている仲間や日本研究の社会学者とも巡り合うこともできた。
一方で、この研究や活動を進めれば進めるほど、人々の意識を変えていくことはとても容易なことではないことを痛感し、その遠い道のりを思うとしばしば絶望感に打ちひしがれたことも確かである。しかし、ある方が仰った“変化を信じて決してあきらめす謙虚に学んでいけば必ず道は開ける”という言葉を信じたい。
私は、学生を育てる大学という職場で働き、自身の子育てをしていく中で、“人のために何かをすることが自分を豊かにする、自分のやりたいことだけを優先して幸福は得られない”ということを実感してきた。次の世代のため、皆がそれぞれに「自分らしく」生きられるような社会をつくっていく努力をすることが、我々の世代の責任だと感じている。
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書いた人: ののむー
銀行勤務を経て教育機関へ。妻との暮らし、子育てをする中で世界基準でジェンダー問題を強く意識。先ずは、今居る場所で、問題と向き合い、自分ができることを誠実に行っていくことが大事だと考えている。(性別役割分業を考えるチーム所属)
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