みなさんは、「ビューティー・スタンダード」という言葉を聞いたことがありますか?日本語で「美の基準」とも言われるこの言葉は、主にテレビや雑誌・広告などのメディアを通して作り上げられた一般的に魅力的だと言われる容姿のことをさします。
こうしたビューティー・スタンダードは、それに当てはまらない人をいじめの対象にしたり、特定の職種や役割から阻害したりという、有毒なルッキズム(外見至上主義)の文化を作り出しています。
画一的な美の基準があるせいで、多くの人が自分の容姿に自信を持てなかったり、過剰なダイエットをして摂食障害を患ったり、多くのお金をかけて美容整形や育毛治療をする必要性を感じたりと、精神と身体に多くの悪影響が見られています。
こうした美の基準は、その形や浸透度合いに差はあれど、世界中どこでも存在します。今回は、海外の大学に留学しているちゃぶじょメンバーはなが、韓国、香港、インド、イギリス、ナイジェリアのビューティー・スタンダードについて各国出身の友人にインタビューをしてきたので、ご紹介します!
※今回のインタビューでは、各国で高校までを過ごした20代前半の女性を対象に、あくまでそれぞれの個人的な見解を教えてもらいました。住む地域や年代、民族、育った環境などによって、ビューティー・スタンダードもその捉え方も少しずつ違う可能性があります。
あなたの国の、可愛い、かっこいいって何?
香港:色白で、細くて、腕と足が細くて、細くて綺麗なカーブの鼻をしていること。あと、背が高いこと。みんな日焼けしないようにとても気をつけてる。
インド:インドでは、女性は背は高すぎず低すぎず、細くて、あとは明るめの色の肌を持つことが大事だと考えられてる。貞潔に見えれば見えるほうがいい。男性の視線に応えるような見た目、という感じ。
韓国:年配の方は、二重まぶた、鼻が高い、目が大きい、あごのラインがV字、顔ににきびがない、などを挙げるかな。若い世代は、年配の方のもつ美の基準を好む人もいるけど、どちらかというとK-POPの基準に近いと思う。必ずしも大きな目でなくても、目鼻立ちと唇がバランスよく配置されていればいいって感じ。全体的な雰囲気やイメージを見る。
体型は人による。グラマラスがいい人もいれば、スレンダーがいい人もいる。特に女性は痩せている方が主流だけど、男性は女性に対してふっくらした体型を求めているように思う。
イギリス:女性の場合、小さな鼻、大きな目、高い頬骨など、ヨーロッパにおいて良しとされる特徴を持っていることかな。あとは痩せていて背が高く、肌がきれいなこと。
ナイジェリア:民族の文化によって多少異なる。でも一般的な女性の美の基準は、肌の色が明るくて、曲線的で豊満な体型で、長い髪をもつこと。髪は縮毛矯正でストレートにするか、生まれつきサラサラで綺麗なカールの髪。
どんな時に、ビューティー・スタンダードが気になるの?
香港:大体メディアを見るときかな。SNSとか、テレビ番組とか、映画とか。あとは、人が他の人の見た目とか体重について何か言ってる時。
インド:インドでビューティー・スタンダードを一番よく思い起こすきっかけになるのは、肌をもっと綺麗に見せるためのクリームを見る時。日焼けしていない時、よくお年寄りの人に顔を褒められる。あと、ボリウッド女優の多くが平均的なインド人女性よりも背が高くて細くて、こういうのがインドの理想なんだ、って思う。
韓国:私の場合、ドラマで超痩せ型の女優さんが可愛い服を着ているのを見るたびに、「自分も痩せたい」と思ってしまう。自分のサイズより少し小さいズボンを手にとって履いてみて、合わないときとか、鏡で自分の体を見たときも。あとは、お母さんやお兄ちゃんに「頬がふっくらしてきたね」と言われることもある。
イギリス:ソーシャルメディア、広告、テレビ番組、映画とか。メディア全般。
ナイジェリア:親が娘に、あるいは女性が他の女性に痩せるように勧めるのはよくある。あと、頭皮にダメージがあったとしても、美しく見えるように縮毛矯正で髪をストレートにすることがいいとされてる。美白・脱色クリームも、あちらこちらで広告を見る。
こういう美の基準を完璧に満たした女性は、映画の中で一番よく見るかな。
学校とかでビューティー・スタンダードが気になったことはあった?
香港:私は高校まで負担に感じたことがあまりなかった。メイクも一度もしたことなかったし。でも、小学校の時は歯並びが真っ直ぐじゃなかったから自分の笑顔がそんなに好きじゃなかったな。それで中学で矯正をした。高校に入ると、運動量が減って体重が増えて、気にするようになった。あと、背が小さいからみんながどんどん大きくなっていくと気になった。
インド:私は幸いなことに肌が明るめの色だから、そんなに気にしたことはない。だけど、私は平均の身長よりも背が高いから、自然と少し体型が大柄になる。子供の頃は、自分より背が低い子たちと比べて自分がとても太っていると思っていた。ただ背が高かっただけなんだけどね。特に体育の授業とかではすごく気になったし、自信もなかった。ロンドンに引っ越して、自分より背が高い人に出会うようになってから、自分は普通だったんだって自信を持てるようになった。
イギリス:幼い頃は、自分の体重がどれくらいあるかとても不安だった。あとにきびがあり、それについてもとても自信がなかった。
ナイジェリア:クラスの一部の男子が女子の体を評価したり、それについて女子も他の女子をからかったりすることがあった。また、先生の中にも女の子の体について不適切な発言をする人がいた。学校でクラスメートの話題にされたりすると、とても不安になった。
ビューティー・スタンダードに近づくために何か努力したことはある?
香港:あんまりない!14歳くらいまでは、自分の見た目も服装にもこだわることはなかった。それ以降も、外に出る時はメイクもしないな。定期的に体重は減らそうとしてみたけど、結局1週間頑張ってやめちゃう。
インド:ずっと、痩せてるほうが大柄であるよりもいいと思ってた。実際社会で大柄の人は差別を受けやすいし。でも、最近は細くあるよりも強くあるほうが健康的で大事だと気づいた。大きくなればなるほど、こういう基準がわたしたちに影響を与えていることに気づく。だから、なるべくそういう影響を受けていることに自覚的であろうと思ってる。昔は女の子らしい服装の方が社会的に評価されると思っていたけど、今はそれは自分らしくないと感じるからやめた。最近は、トレンドのメイクをしようとしてるけど、将来的には自分のエキセントリックな顔の特徴を受け入れられたらいいなと思ってる。
韓国:ニキビができた時はパックをする。普段、学校に行くときは化粧をしないけど、ニキビを見つけるとファンデーションを塗らなきゃ、と思ったり。韓国にいたころはトレーニングをして、体を鍛えてた。パックをしたり、自分のために運動したりすると気持ちいいけど、誰かに言われたからしているという感覚になるとちょっと嫌な気分になる。自分の見た目に否定的になって、努力をするのも疲れる感じ。例えば、オシャレがあまり好きではないんだけど、おしゃれな友達と旅行に行くと、合わせておしゃれしないといけないと思ったり。
イギリス:努力してるような、してないような。体型を維持するために運動したり健康的な食事をしたりはする。時々化粧をするのも好きで、おしゃれな服を買うのも好き。
ナイジェリア:自分の体のラインを強調するためにトレーニングをした。 あと、定期的にストレートパーマをかけたり、髪を伸ばしたりしてた。
あなたの国の人は、一般的にビューティー・スタンダードに対してどういう印象を持ってるの?
香港:多くの人はビューティー・スタンダードに当てはまる見た目に惹かれてると思う。とても根深く意識に染み付いてるから、多くの人はそれが如何に有毒かあまり気づいてないと思う。親とか親戚が子供に「ちょっと太ったね」とか「もっと運動したほうがいいよ」とか言ったりね。そんなに太ってもないのに。こういうコメントを受け取り続けると、よくない考えに取り憑かれたり、摂食障害になったりしちゃうよね。幸い私の親はそういうことは言わなかったけど、友達でそういうコメントを受けた結果自分に対して否定的な感情を持つようになった人はいる。
インド:ビューティー・スタンダードは有毒だ、って多くの若い女性は思ってる。もう少し年配の人は、やっぱり明るい肌と細い身体のほうがいいと思ってるかな。それこそが高い階級の象徴として捉えられてるから。
イギリス:私の知っている人々の間では、美の基準は有害だと考えられてる。人々を自分自身について不安にさせることで、「欠点」を直してくれる製品をとにかく次々買わせるマーケティング手法だと思ってる。だから一般的には美の基準を気にしない方がいいと思われてるけど、結局ほとんどの人は自分自身を美の基準と比較しないのはほぼ不可能だと感じてると思う。だからなかなか変わっていかない。
ナイジェリア:ほとんどの人は、これらの美の基準が存在することにそもそも気づいてない。幼少期に文化的な規範を植え付けられたり、学校やテレビで体について馬鹿にすることが許容されていたり、そうした経験を通じて無意識のうちに偏見を持つようになる。
でも、新しい世代は、色々な容姿の人をメディアに取り上げたり、全ての人の美しさを認識することで、こういう偏見を無くそうとし始めている。例えば、肌の色が濃いことも最近は魅力的だと考えられるようになってきたし、また、アフリカの自然なアフロヘアを保つことも素敵なことだとされてる。
どうでしたか?みなさんと似たような体験や、あるいは全く違う体験をしている人はいましたか?
国や地域によってこんなに「美」の形がいろいろあるにもかかわらず、世界中の人々が同じように自国の基準にプレッシャーやストレスを感じてしまう現状がが少しでも変わっていくといいですね!
Written by はな
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